幼児・子供から大人のための英会話〜英会話教室MLS

ドラマを通した英語教育 – English Through Drama(E.T.D.)

ドラマを通した英語教育 – English Through Drama(E.T.D.)

皆さんこんにちは。
英会話教室MLS(モデル・ランゲージ・スタジオ)の代表・太田雅一と申します。よろしくお願いいたします。

MLSでもブログを書くことになりました。
1回目に何を書いたら良いのか悩んでいるときに、MLSを立ち上げて6年目に発行した会員向けの「ニュースレター」を発見しました。
そこに、MLS独自の指導法ドラマメソッド🄬の原点となる「劇を通した英語教育(English Through Drama – E.T.D.)」についてまとめた文章がありましたので、良い機会と思い、ご紹介させていただきます。

記事は数回にわたり、また少し硬い話になりますが、お付き合いください。

なお、引用した内容などはかなり古いものもありますが、根源的な部分は変わっていないと思いますので、そのまま掲載します。

ドラマを通した英語教育 – English Through Drama(E.T.D.)

コミュニケーション成立要件からの考察と教育英語への導入

「ドラマ」と書くと、舞台上での劇発表を思い浮かべるかもしれません。しかしMLSで言う「ドラマ」は、劇を発表することだけを指しているのではありません。教室内で、劇の手法を「利用」することも、広い意味でドラマと捉えていきます。

ドラマをコミュニケーション(会話)の一つの形態として捉え、通常の英語の授業に「俳優の訓練方法(特に対話を経験させる方法)」を取り入れ、言語活動の活性化へとつなげるMLS独自の教授法を「ドラマメソッド🄬と呼んでいます。

いわゆる「台本」のある演劇だけではなく、教科書に出てくる対話文(ダイアローグ)やストーリーを台本代わりにして※、クラスメートの前で発表したりもします。
どのような形でも、既存の英語教授方法に「ドラマの要素」加えることによって、「①感情がこもった、②動き(アクション)のある、③生きた」英語の習得が可能となります。

※教科書などを「劇化」することを「ドラマタイズ(dramatize)」と言います。

演劇における「シアター」と「ドラマ」の違い

イギリスの演劇教育家であるブライアン・ウェイは、演劇を「シアター(theatre)」と「ドラマ(drama)」に大別しています。
前者は主として俳優と観客の間のコミュニケーション、後者は一人の人間の経験が目的であり、個人の独創性を育てるものです。

ウェイの提唱する「シアター」は、MLSにおいては「生徒による英語劇の発表およびそこに至る過程(リハーサル)」を指し、「ドラマ」は「教室内における様々なアクティビティ」を指すと言えます※。

いずれにしろ、英語教育におけるドラマはE. Daleが指摘するように「劇(必ずしも舞台のみをさすのではない)として表現することによって、生徒の直接経験の不足を学習目標に合わせて重点的に補い、深め、生徒の体験としてそれを、全感覚を通じて習得させる学習活動」(河野守夫・神戸外大教授)と捉えてよいでしょう。

※ただし厳密に言うと、ウェイの言う「シアター」は商業演劇のことを指しており、「強要すると人為的になり、人格形成上障害になることもある」と、ウェイ自身が指摘しています。

 

これからここで述べるのは、いかにして教室内で「ドラマ」を楽しく効果的に活用し、コミュニケーションの「手段としての英語」を教えられるか、その実践方法です。

留意していただきたいのは、ドラマの手法だけで英語学習が完結することはない、ということです。
ドラマメソッド🄬は、英語の四技能の内「リスニング(聞く)」と「スピーキング(話す)」という二つの力を鍛え、会話力・コミュニケーション能力を伸ばすことに主眼を置いています。

また、座学とは違う「アクティブなレッスン」で、生徒が学ぶことを楽しみ、英語に興味を持ち、自発的に学ぼうとする姿勢を見せるようになる、という「副産物」があるのも、ドラマの持つ魅力の一つです。

英語はコミュニケーションの手段・道具です。ドラマの手法を取り入れることで期待できる効果を、コミュニケーションの成立要件にのっとって考えてみたいと思います。

コミュニケーションの成立過程

コミュニケーション成立過程については、斉藤美津子先生の「話し言葉の科学」(サイマル出版)に非常に詳しく書かれています。少々長いですがここに引用させていただき、その後に私たちの考えをご紹介したいと思います。

私どもは大変複雑な世界に住んでいます。私たちが人々と話をしているときに、絶えずその周りでいろいろなことが起こったり、音がしたり、次から次へと視線の中に入ってくるものがあります。気持ちのよい日差しだとか涼しい風だとか、蚊がちくりと刺したとか、口の中に放り込んださまざまな味などがあります。

このようにして、私たちが話をしているときは、絶えず多かれ少なかれ刺激を受けているので(図の①)それが私たちの感覚神経を刺激し、私たちの体内に入って行くということになります(図の②)。

私たちの感覚神経というものは、対象物として刺激したものの全部ではなく、一部にしか反応しえないという運命を持っています。すなわち聞いたもの、見たものなどの全部でなく、その一部だけが感覚神経に伝わっているということになります。伝わったものは脳に届き、そして筋肉のすみずみの末梢神経にまで伝わっていきます。それを私たちが自分自身の中に持っているフィルターにかけるわけです(図の③)。

(中略)

つまり簡単に言うと、自分が考え付いた言葉で、自分が一番慣れている形で、自分としての言葉に置き換えるのです(図の④)。ここで言語と思想の相対関係がわかるわけです。最初の人に話した場合、この二番目の人の言葉がまた最初の人に対する刺激になって、今と同じ方法で繰り返されていく(図の⑤)。この過程は、コミュニケーションをする時には必ず通らなければならないものです。コミュニケーションが完成した場合は両面交通となります。両面交通をしている話し手は、いわゆるfeedback“送り戻し”をしていて、つまりキャッチボールのように話し手がボールを投げると、そのボールが聞き手にいき、聞き手はそれを受け取ってまた投げ返すといった具合になるわけです。これがコミュニケーションの完成された形です。(図の下の8が重なっているのは、コミュニケーションが完成した場合の両面交通を現しているものです)

こちらにさらに付け加えると、話し手との関係、ボディアクション、ジェスチャー、表情、さらに言葉に関して、その状況に一番合う単語、文章、アクセント、そしてイントネーションが入り混じり、自分を表現していると言えるでしょう。

さて次回以降は、この続きで「コミュニケーションは言葉だけではない」「学校における英語教育」「MLSでの教え方=Talk & Listen方式」「学校英語へのTalk & Listen方式の導入方法」「会話の要素の総合=Improvisation(即興)」「羞恥心をとろう」などに触れていきます。

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太田 雅一

MLS社長 大学生時代に学外の英語劇連盟(MP)に所属し、卒業時に、作詞家・脚本家・キャスティングディレクターの奈良橋陽子とMLS(Model Language Studio)を設立。 米国ブロードウェイ演劇のプロフェッショナルから習った「劇を通しての英語(English Through Drama)」を基礎に、それに教育的観点(機会均等を念頭に置いて)を加味し、独自の英語教育法(+Super-STAGE)ドラマメソッド®を開発推進している。