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「私は英語を勉強しました。」
唐突ですが、”I ( ) English.”という不完全な文章があって、「勉強しました」という意味の語を補わなければいけないとき、皆さんはどのような単語を思い浮かべますか。
きっと多くの方は、”studied” という語を選ばれたのではないでしょうか。
中には、”learned” という語が頭をよぎった方もいらっしゃると思います。実は、私もその一人です。
そして、ふと、”learned”と言ってもよいケースもあるのではないか、と思ったのでした。
身をもって学ぶ英語
MLSでは毎年サマーキャンプを開催しています。
2泊3日の日程で、少なくとも5回は参加者で配膳をし、食事をとる機会があります。
たとえばランチでハンバーガーを食べるとなれば、「チーズをはさんでほしいな」「ケチャップをかけたい」「一個じゃ足りない!」といった事態が自然と起こってくるわけです。
でも、食事をよそってくれるのはネイティブの先生達なので英語でないと伝わらない。
下手をすると食いっぱぐれるかもしれないから、と必死になる(笑)
キャンプには小学1年生から6年生までのお子さんがいるのですが、各々のレベルにあった表現からスタートして、実生活で役立つフレーズ(型)に落とし込んでもらうことを目指しています。
あまり英会話に馴染みのないお子さんであれば、最初はチーズを指さしたところで ”Cheese, please.” と(配膳役の)先生に教えてもらい、リピートしてみる。
食事を終えたところで、ワークブックに立ち返って「何か欲しいときには、”I’d like a(n)/some ***, please.”と言えばいいんだ!」と勉強をする。
午後のアクティビティ中にも類似・関連した表現を使う場面が多々ありますので、次の夕食の時間には、“I’d like some sausage, please.”と、見事BBQでこんがりと焼かれたソーセージをゲットしていくというわけです。
即興性を磨くというアプローチ
現実問題として、このキャンプには私のような日本人スタッフも同行していますし、英語で話せなかったからといって食事にありつけないということはありません。
ですが、たとえばこれが留学中のアメリカで、カフェテリアでの一場面だったらどうでしょうか。
先程の英文にあった助動詞の “would” という語を例にとると、一般に公立の学校では中学2年生で学ぶことになっています。
私自身、文法学習においては知識を積み上げていくことも非常に大切だと考えています。
ですが、学校の外で英語を学ぶからこそ、実際のやり取りを学ぶ(即興性を磨く)というアプローチ・学びがあっていいのだと考えます。
ここでは深入りしませんが、「話すこと[やり取り]」については、文部科学省が『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説』の中で、従来の<4技能>から一歩踏み込み、<4技能5領域>という形で、「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力」であり、「育成する」ものと言及しています。
(ご興味のある方は、下記のリンクから『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』をご参照ください。http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/index.htm)
ネイティブが解説する “study” と “learn” の違い
ところで、冒頭の疑問を英語ネイティブの同僚にぶつけてみました。
彼によると「端的に言えば、それが何かを身に付けていく『過程』なのか、それとも『結果』なのか、焦点の違いがポイント」。
「’study’は、学ぶ『過程』に着目しているので、極端なことを言ってしまえば学んだことが知識として頭に入っていなくても(教える先生としては困るけれども)構わない。一方の “learn” は、経験などを踏まえ『結果』として知識やスキルを身につけることを含意している」とのことでした。
たしかに英和辞書では “learn” の意味を「(~を)学ぶ」としている例が多いようですし、たとえば冒頭の文章に’last night’というフレーズがあったとすれば、コロケーション(※よく一緒に使われる単語の組み合わせ)上も十中八九 “studied” を選ぶことになるかと思います。
(小声)もし、一晩で英語を会得されたという読者の方がいらっしゃいましたら、ぜひこっそりとその方法を教えてください
もっとも、私がアテンドしたキャンプに関しては、”They learned English through the Camp.”と言えるのではないか――と。
ただ英語を学んだというだけでなく、むしろ英語を使わなければいけない環境だったからこそ、参加してくれたお子さんたち自身が助け合い、次々と課題をクリアしていき、一回りも二回りも大きくなって家路についてくれたことを、心より嬉しく誇らしく思っています。
MLSでは教務部および研修部に所属。「英会話は趣味」がモットーで、大人ドラマクラスの元生徒。
米国の大学で日本語を教えていた経験もある。
ペンネームは、名前が一発で伝わらないことを不憫に思ったホストファミリーが発案してくれたもの。